皮膚糸状菌症(人畜共通感染症)
皮膚糸状菌症 (人畜共通感染症)
概要
最近の家庭内飼育動物は、単なるペットから伴侶動物として、よりいっそ
う人と密接に接触する飼育形態に変化してきました。
それにともなって皮膚科領域にも動物から人へと感染したと思われる皮膚
糸状菌症(慣例として白癬と呼ばれる)の報告が多くなってきました。
皮膚糸状菌症は、皮膚糸状菌に属する真菌が表皮角質層、爪、被毛などに
寄生することによって引き起こされる皮膚表皮の疾患です。
原因
皮膚糸状菌症を引き起こす皮膚糸状菌として現在約40種が知られています
その中で、白癬菌属(トリコフィートン属)表皮菌属(エビデルフィート
ン属)小胞子菌属(ミクロスポーム属)の3菌属に分類されています。
犬の皮膚糸状菌症の原因菌は約70%がMicrosporum canis、約20%がTric
hophyton mentagrophytes、約10%がMicrosporum gypseumです。猫では、
約99%Microsporum canis、です。ウサギやハムスターではTrichoyhton mentagrophytesが原因の場合が多いです。
症状
頭部(特に顔部)や体部(ウサギやハムスターは腹側面に多い)に境界明
瞭な円形の脱毛部が同心円状に拡大し、時間の経過とともに先に脱毛した
部分から発毛する(中心性治癒)。痒みは、一般的に軽度ないし中程度ある
が、細菌性の二次感染があれば顕著となります。
検査
1、ウッド灯検査
360nmの紫外線を照射すると感染被毛は蛍光を発する。
2、直接
病巣から被毛や角質を採取し、顕微鏡で菌糸や分節胞子の有無を確
認する。
3、培養検査
病原真菌を培地で培養して分離同定する。
4、病理組織学検査
病変部から組織を採取して、病理学的に菌要素の検索を行う。
5、免疫学的検査
原因菌の培養濾液を用い、免疫応答能の検査を行う。
治療
皮膚糸状菌症は、治癒するまでの間罹患動物から病原性を有する菌要素が
環境中に散布されるので、同居動物や飼い主への感染が拡大する危険性が
高くなります。そのため感染予防を図りながら、環境浄化、局所療法、全
身療法を併用してできる限り短期間に治療を行ってください。
予防
罹患動物を早期に発見し、厳重に隔離し治療を行う。完全に治療しないと
保菌状態となり、再発して他への感染源となる。脱落感染被毛なども感染
源となるので、徹底して環境を浄化することが必要です。人をはじめ他の
動物にも感染することに留意してください。