狂犬病 (人畜共通感染症)
狂犬病 (人畜共通感染症)
概要
狂犬病は致命率100%と言われ、極めて危険な人畜共通のウイルス感染症です。すべての哺乳動物に発生し、多くは本症に罹患し狂暴化した動物の咬傷によって感染します。このウイルスは、感染すると中枢神経系に特異的に親和性があり、大脳皮質の神経細胞内で増殖をします。この時期に反射機能が亢進して攻撃的狂暴性の神経症状を示します。やがて増殖したウイルスは下行して全身に広がり麻痺症状を示します。この時期に唾液腺細胞などで盛んに増殖した病獣の唾液は高い感染性を示します。そして、最後に呼吸麻痺が起こり死亡します。
わが国では、幸運にも島国であることと犬の予防接種の徹底や厳重な動物検疫により、1957年以降動物での発症はありません。しかし、1970年に一例と2006年11月にフィリピンで感染をして帰国後60歳代の男性2名が続けて狂犬病を発病し死亡しています。
原因
狂犬病ウイルスが病獣の唾液から咬傷などにより感染する。飛沫感染も存在します。
症状
犬の潜伏期間は10~16日であり、症状は一般的に15~25日以内に現われます。
1、食欲不振、異嗜症状
2、不安、挙動の異常
3、流涎
4、異常吠声、攻撃的狂暴的神経症状
5、沈うつ
6、起立不能(麻痺)、昏睡
診断
1、臨床症状の疑わしい場合には、丈夫なケージ内に隔離収容し少なくとも2~3週間観察をする。
2、脳細胞のネグリ小体と非化膿性脳炎像の有無による病理組織学的診断をする。
3、ウイルスの分離試験および蛍光抗体法による診断をする。
治療
一度発症してしまった狂犬病に対する有効な治療法は今のところないです。
予防
狂犬病予防法が昭和25年に制定され、犬の所有者は生後91日以上の犬に年1回狂犬病の予防ワクチンを接種することと役所に登録届けをしなければならない義務があります。近年、わが国においては国内での犬の狂犬病の発症がないため、犬の所有者はこの法律の遵守がうすれてしまい、接種率が40%を切ってしまいました。
WHO(世界保健機関)では感染防御に70%の免疫集団が必要であると報告していす。接種率が40%を切る日本国内の現状は非常に危険な状態であると認識しなければなりません。
WHOは人の場合には、もし狂犬病の危険のある動物に咬まれた場合には、ただちに傷口を洗浄、消毒し、人狂犬病免疫グロブリンを6回接種して発症を抑える狂犬病暴露後発病予防法を推奨しています。また、海外渡航者で感染の危険が考えられる場合には、狂犬病暴露前免疫として通常3回組織培養狂犬病ワクチンの接種を受けるとよいです。