猫ひっかき病 (人畜共通感染症)
猫ひっかき病 (人畜共通感染症)
概要
猫ひっかき病は人の病気です。一見ふざけた呼び名ですが、英語に直して
も(キャット・スクラッチ・デイジーズ)れっきとした世界共通の病名で
す。猫にひっかかれたり、かまれた後、赤く腫れたり、発熱やリンパ節が
腫れる病気です。しかし、動物側にはほとんど不顕性感染で症状は出ませ
ん。米国では、年間約40,000人の人が感染すると報告されています。わが
国でも人畜共通感染症の中では一番多いといわれ、推定1~2万人の猫ひ
っかき病の発生があり、決してまれな疾患ではなく、米国と同じような発
生率であると言われています。
原因
近年、原因がバルトネラ・ヘンセレという細菌であることが判明しました
この細菌は、感染を起こした猫の赤血球と猫ノミから分離され、猫ノミが
媒介昆虫であることが明らかになりました。
猫の赤血球内にこの細菌が感染をしても、猫の健康状態には変化がありま
せん、しかし、その猫に寄生した猫ノミが吸血するとバルトネラ・ヘンセ
レ菌は、猫ノミの体に入り猫ノミがフンをしたときに一緒に出てきます。
このノミフンは猫の毛に付き、猫が舌でグルーミングをした時や皮膚をか
いてノミをつぶした時に、猫の口や爪に菌が付きます。そして、猫が人を
ひっかいた時や咬んだ時に、菌が人の体の中に侵入し感染するという仕組
みです。
その他にも直接猫ノミに刺されることにより人への感染や犬を飼っていて
その犬に猫ノミが寄生していた場合にも感染した報告があります。
疫学
国内の猫からのバルトネラ・ヘンセレ菌の分離率は7,2%で、寒冷地(0%)
より温暖地(20%)に多く、気温の高くなる夏に猫ノミの活動性が高まり保
菌猫が増加すると考えられています。
また、3歳齢以下の猫の保菌率が高く、成猫からの感染報告は少ない、理由
は、成長とともに免疫機構(抗体)が排除するからではないかと考えられて
います。
人の感染は15歳以下の症例が45~50%を占めており、9歳以下では男子に多
発する傾向が報告されています。
検査
罹患猫や犬に臨床症状が出ないので、抗体検査が可能です。
治療
感染猫に対して、ドキシサイクリン、リンコマイシン、アモキシリンなど
の抗生物質を投与することである程度抑制することはできますが、血液中
から完全に菌を排除することは出来ません。
飼い主様の対応
特に拾った子猫にノミが多数寄生している場合や飼育者の家族に15歳以下
のお子様がいる時には、十分な注意が必要になります。
感染防御として猫による外傷を避けることであるが、ペットの飼育環境を
清潔にし、ノミの予防・駆除や猫の爪切りなどが有効です。その他、なる
べくペットは室内飼育の方が感染やノミの寄生の予防ができます。
もし、猫からの受傷があり、発熱がある場合には医療機関へ受診して状況
を医師に説明することが重要です。